株式投資を始めたばかりの方なら、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「この株は1,000円だけど、あの株は500円。どちらが安いの?」 「みんなが『PERが低いから割安だ』と言うけど、PERって何?」
実は、株価の高い・安いは単純な金額では判断できません。そこで重要になるのが**PER(株価収益率)**という指標です。
この記事では、株式投資の最も基本的で重要な指標であるPERについて、初心者でもわかりやすく解説します。読み終える頃には、あなたも「この株は割安か割高か」を自分で判断できるようになるでしょう。
PERとは何か?超基本から解説
PERの定義と計算方法
PERは「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。
計算式:PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)
例えば、以下のような企業があったとします:
- A社:株価1,000円、1株あたり利益100円 → PER = 10倍
- B社:株価500円、1株あたり利益25円 → PER = 20倍
この場合、株価はA社の方が高いですが、PERで見るとA社の方が「割安」ということになります。
PERが表す本当の意味
PERは「投資回収年数」として理解するのが最もわかりやすいです。
PER10倍なら「現在の利益水準が続けば、10年で投資額を回収できる」という意味になります。つまり、PERが低いほど投資回収期間が短く、割安と考えられるのです。
先ほどの例では:
- A社:10年で投資回収
- B社:20年で投資回収
どちらが魅力的かは明らかですね。
業界別PER水準を知ろう
PERの適正値は業界によって大きく異なります。「PER20倍は高い」と一概には言えないのです。
低PER業界(5-15倍程度)
金融業界
- 銀行業:8-13倍程度
- 証券業:10-15倍程度
- 特徴:規制業界で安定収益、成長性は限定的
素材・エネルギー関連
- 鉄鋼:8-12倍程度
- 化学:10-15倍程度
- 特徴:景気循環の影響を受けやすく、設備投資負担が大きい
商社・卸売業
- 総合商社:10-15倍程度
- 特徴:安定した収益構造だが劇的な成長は期待しにくい
中PER業界(15-25倍程度)
製造業
- 自動車:12-18倍程度
- 機械:15-20倍程度
- 電機:15-25倍程度
小売・サービス業
- 百貨店・スーパー:15-20倍程度
- 飲食業:18-25倍程度
高PER業界(25倍以上)
IT・通信業界
- ソフトウェア:30-50倍以上
- インターネット関連:40-80倍以上
- 特徴:高い成長性が期待される
バイオ・医薬品
- 30-100倍以上(開発段階により大きく変動)
- 特徴:新薬開発の成功可能性に投資家が期待
PERの実践的な使い方
1. 同業他社との比較
最も基本的で効果的な使い方です。
例:小売業界での比較
- C社(百貨店):PER18倍
- D社(百貨店):PER25倍
- 業界平均:PER20倍
この場合、C社は業界平均より割安、D社は割高の可能性があります。ただし、D社に特別な成長要因がある場合は、高PERでも妥当かもしれません。
2. その企業の過去との比較
企業の過去5-10年のPER推移を見ることで、現在の水準を判断できます。
例:E社のPER推移
- 2020年:PER15倍
- 2021年:PER18倍
- 2022年:PER12倍(コロナの影響)
- 2023年:PER16倍
- 2024年:PER22倍 ← 現在
E社の通常のPER水準は15-18倍程度なので、現在の22倍は割高圏にある可能性があります。
3. 市場全体との比較
日経平均のPERは通常12-16倍程度で推移します。これを大きく上回る銘柄は慎重に検討すべきでしょう。
PERの落とし穴と注意点
PERは便利な指標ですが、万能ではありません。以下の点に注意が必要です。
1. 一時的な利益変動の影響
特別損失がある場合 災害や事業再編で一時的に利益が減少すると、PERは異常に高くなります。この場合、通常の利益水準で計算し直す必要があります。
特別利益がある場合 不動産売却などで一時的に利益が増加すると、PERは異常に低くなります。これを「割安」と判断するのは危険です。
2. 成長性の考慮不足
高PERでも、将来の成長が期待できる企業は魅力的です。
例:F社(IT企業)
- 現在:PER40倍
- 予想:利益が年30%成長
- 3年後の実質PER:40倍 ÷ 1.3³ = 約18倍
成長を考慮すると、現在の高PERも妥当に見えてきます。
3. 赤字企業では計算不可
当期利益がマイナスの企業はPERが計算できません。この場合はPSR(株価売上高倍率)などの別指標を使います。
実際のPER活用法:ケーススタディ
ケース1:低PER株の分析
G社(地方銀行)の例
- 現在PER:8倍
- 業界平均PER:12倍
- 一見割安に見える
詳細分析
- 不良債権比率が高い
- 人口減少地域で将来性に不安
- 低金利政策の長期化で収益圧迫
結論:単純な「低PER=割安」ではなく、構造的な問題を抱えている可能性
ケース2:高PER株の分析
H社(クラウドサービス)の例
- 現在PER:60倍
- 業界平均PER:35倍
- 一見割高に見える
詳細分析
- 売上成長率:年40%
- 市場シェア拡大中
- 収益性改善トレンド
結論:高PERでも成長性を考慮すると妥当な水準の可能性
まとめ:PERを使いこなすためのポイント
PERは株式投資の基本中の基本となる指標ですが、以下のポイントを押さえることが重要です:
- 業界比較が基本:同業他社や業界平均との比較を重視する
- 時系列分析も重要:その企業の過去のPER水準と比較する
- 成長性を考慮:将来の利益成長を加味した判断をする
- 他指標との組み合わせ:PBR、ROE、財務指標なども併用する
- 一時的要因を除外:特別損益などの影響を調整する
投資は自己責任ですが、適切な知識と分析に基づいた投資判断で、あなたの資産形成を成功に導いてください。